坂庭修 問わず語り

出がらしにだからこそできる役目や若い奴らに残せることがあるんじゃないか

同志少女よ、敵を撃て

 2024.9.3読了。長かった!フィクションのこんな長いもの読むの初めてかも知れない。フィクション小説はほとんど読まないし。途中で挫折せずにこれが読めたというのは「面白かった」のである。でも重くて少しずつしか読み進めることができなかった。
 以下は本書の中の「推薦の言葉(ロシア文学研究者沼田恭子)」からの抜粋である。

 第二次世界大戦時、最前線の極限状態に抛(ほう)りこまれたソ連の女性狙撃手セラフィマの怒り、逡巡、悲しみ、慟哭、愛が手に取るように描かれ、戦争のリアルを戦慄とともに感じる傑作である。読者は仇をとることの意義を考えさせられ、戦争の理不尽さを思い知らされ、喪失感と絶望に襲われながらも、セラフィマとともに血なまぐさい戦場を駆け抜けることにことにちがいない。

 今から80年以上も前のソ連ナチスドイツの戦いを描くが、自分が学生時代に世界史を学んでいなく、ヨーロッパにおける様々な戦争について無知であった。「戦争は女の顔をしていない」をコミックで読んでその凄惨な様子に驚愕した。
 そしてこの本のエピローグに書かれているとおり、プーチンのロシアは多大なる犠牲を払って勝利したこの「大祖国戦争」の美しい物語の延長線上にあることを知った。ウクライナを攻めることは正義なのである。

 フィクションの嫌いなところは「いかにも都合よく起こる流れ」が鼻につくことなのだが、この小説でも最後のセラフィマが捕虜になって拷問され、脱出するまでの間が「えっ、そんな都合よくいくか?」が散見され、ルパン三世的でちょっとがっかりするのだが、おすすめの本である。